相手が自分で全て出来ると思い込んでいる時どうすれば良いのか、新しい研究がその方法を教えてくれています。
もしかすると職場や近い存在の中に“自分は万能で何でも出来る”と考えていると思われる人がいるかもしれません。
大事な仕事に対して自分も努力を共有すると合意したのに、その相手はその仕事を奪い取ってあなたを待たずに完成させてしまうと感じた経験があるかもしれません。これは単なる自己中心的な性質の表れなのでしょうか?
でも、その相手は大抵気心が合う相手であるし、評価や権力を追い求める様な相手ではないことから、その自己中的な考えは単純に当てはまらない様に思えます。もしかすると、その相手は自分を万能だと思っているというよりもむしろ、一人で仕事をすることに慣れていて、一人の方が気が楽だと考えているのかもしれません。
あなたにとって問題なのは、彼らにより、自分が“二番手”という役柄に追いやられてしまうという感情と、重要な場面に携わる機会が全く訪れなくなってしまうということです。
言い方によっては、あなたの為に何でもしてくれるパートナーや同僚のおかげで、あなたは別のことに時間を使える様になるとも言えます。
しかし実際のところ、あなたは自分の考えを結果の為に提供したいと考えています。もしこれが仕事に関係するタスクであったら、その相手がいつも仕事を片付けることに気を良くしないかもしれません。もし手に負えない相手と付き合っていたら、あなたは頭のどこかで家周りを世話してくれる誰かがいるというのは良いことかもと考えるかもしれません。
でもこれらの場合も同様で、やはりあなたはもっと自分でやりたいと思っているのではないでしょうか。
例えば、家庭にある育ち過ぎてしまった鉢植えの植物たちを植え替えることをパートナーと話していたら、仕事から帰宅後、全てがきれいに新しい鉢植えに入っていたらどうでしょうか。あなたがやりたかった方法と違ったとしても、もう手遅れなのです。
自分で勝手に物事をやってしまう人達よりも更に最悪なのは、相手があなたの考えを求めておきながら、あなたの考えを考慮せず、そのまま自分で仕事を終えてしまう人達です。
後々彼らは、全て自分でしなければいけなかったとあなたを責めるでしょう。この時にはあなたは、相手が純粋な“個人プレイ派”というよりも“犠牲者ぶる人”の方が適切だと思う様になっているかもしれません。自分が良いと思って進んでこのような行動を取る人を、誰が責められるでしょうか?
このような問題が一般的であるのと同様に、通常、心理学は全てにおいて個人プレイをしたいと思う人達の原因や結果をはっきりと研究していません。驚く方もいるかもしれませんね。
しかし、ベルゲン大学の心理学者、セシル・ショウ・アンドレアセンとその同僚による新しい研究(2019年)では、その問題に対する答えが示されていました。
このノルウェー人の筆者は“仕事中毒の人”に注目し、なぜ人々は求められている義務以上の努力をしなければいけないという必要性を感じ、更になぜ全てを自分一人でしなければいけないと思うのかということについて研究しました。
ここで一点明確にすると、研究チームは仕事中毒を「仕事に対する多大な傾注/打ち込み、長い勤務時間、求められている以上に働く、仕事に対する抑えのきかない執着」と定義しています。
“全てをしなければいけない”という感情は、あなたの過度に働く傾向に確かに関係しています。このノルウェーの著者が考える仕事中毒の一因となる性格は、ナルシシズム、完璧主義、心理学的タイプA(競争意識が強く、働き者)、そしてある種の神経症といった個人プレイ主義の心的傾向です。
また仕事環境が仕事中毒をより強める可能性があります。
例えば、多くを求められる厳しい仕事や個人の生産性によって報酬が決まるタイプの仕事では、仕事中毒の傾向が強くなります。その他には上司の指導方針なども仕事中毒に関係があるとされ、特に上司が部下に対して虐待的な態度を取るかということが関連している様です。
アンドレアセン達は職場の要因から起こる仕事中毒の指標を理解する為に、合計9つの仮説を実験し、手始めにノルウェー政府によって登録された労働者から無作為に5,000人のサンプルを集めました(このノルウェー政府のデータは国内全ての労働者の統計を記録しています)。
その中で約3分の1の人がアンケートに全て答え、結果として約1,608名の参加者が集まりました。彼らの平均年齢は45歳で、その中の3分の1は何かしらの管理職に就いていました。
仕事に対する中毒性は、以下の7つの項目によって測られました
“核心となる中毒症状”の突出、耐性、気分調整、再発、撤回、葛藤、課題。職場環境の指標として、仕事の需要性と統制、不明確または対立する仕事役割という問題面、悪い関心の対象となること(いじめ、仲間はずれ等)を含んでいます。指導方針、個人の特質、直属の上司の暴力的態度は、仕事中毒を決定付ける方程式において最終項目となりました。
このノルウェー労働者のサンプルでは、労働中毒と定義された人は約7%でした。
しかし、全ての参加者において仕事中毒の尺度となったポイントは、好ましくない職場環境に関連しているということが分かり、また筆者は、「仕事中毒者は現実逃避、没頭性、個人的目標達成によって駆り立てられている」という可能性があるということを指摘しています。
仕事中毒者は「不快なストレスから逃れるため」に仕事に没頭してしまうのです。
低い仕事統制が高いストレスの前兆とする以前の研究とは異なり、仕事中毒の人は自分に責任を感じる際、より多くの仕事をすることでより多くストレスを抱えることになることがこのサンプルによって明らかになりました。
有害な職場環境は仕事中毒性の一因となりますが、「他人と交流、打ち解け合い、親密になることの難しさ」のせいで仕事中毒の人が気付かずにそういった職場環境を作ってしまっているのかもしれません。虐待的指導方法は従業員の労働中毒的態度へほとんど影響が無い様に思われました。
しかしその一方で部下に自分の判断で仕事を進める様放置した上司の方が、仕事中毒を助長させる可能性が高いことが分かりました。
仕事中毒者と個人プレイ主義者のメンタルの関係性に戻ると、人々は仕事を完成する必要がある際に明確な指示が得られない場合、彼らの様な方法を取り込む様になるということをノルウェーの研究は示しています。
中毒性による類推はこの点においてとても興味深いです。個人主義になりそうな人は恋愛かキャリアいずれかの初期段階で、成功する為には誰よりも勝る必要があると感じるのではないでしょうか。またはもしかすると気付かないうちに彼らは必要以上に努力し、そうすれば報酬が得られることを知り、特に力を注いだ対象から評価をもらえた時にその気持ちを強く感じることでしょう。
特に彼らの両親や先生が、評価や愛情、感謝といったものを得る為には個人が自分でそれを手に入れることが出来ることを証明する必要があるという信念を増進させた場合、そうした行動が人生の早い段階で形成され始める可能性はあります。
アンドレアセン達は労働中毒に関連する個人の特色を測らなかった為、彼らは重要な一因を見過ごしてしまったかもしれません。彼らは仕事中毒者の心的傾向の変化の28%しか説明出来なかったという可能性があります。
更に、彼らは職場の最高地位を占める労働者、つまり雇い主や社長を調査しませんでした。
彼らは管理する能力に頼った役職であるからこそ、彼らこそが個人主義的考えを持っている可能性が高いかもしれません。彼らの仕事や対応は多くの能力を必要とするだけではなく、投資者に吟味され、彼らの判断が良い結果を招いた際に報われます。関係性においては、“最高経営責任者”というものはなく、長い間個人で全てをこなし、生きてきた結果としてこうした関係に落ち着いたのかもしれません。
まとめ
あなたを必要としない人達を対処するには、彼らがあなたにどのような気持ちにさせるかを正直に話せる瞬間を見つけてみましょう。
彼らがあなたを招き入れることに対して報酬を与えることによって、彼らの全てを自分でしようとする“中毒的”習慣を断ち切りましょう。
相手の支持を仰ぎ続けて怒りに煮えたぎることはより悪化した状況を生むだけです。
家庭、職場いずれにしても関係性を向上し満たすコツはあなたと相手両方にとってとても重要な課題やタスクにおいての協力にあります。