脳震盪は自殺の危険率を高める?

ほんの少しの外傷性脳損傷ででさえ、自殺の可能性を高めるかもしれません。

 

 以前の研究では外傷性脳損傷(TBI)を経験した人は自殺の危険性が高まることが記されていました。しかし、これらの研究の多くはかなり少ないサンプル数を用いるなど方法論的に制限があります。トリネ・マドセンとマイケル・ベンロス、そしてその同僚達はデンマークの総合医療記録を利用し、その大量のサンプルの中で外傷性脳損傷と自殺の関係性を述べました。この記録は長期にわたって集められているので、研究チームは以前の状態とその結果の関係性を研究することが出来ました。彼らの研究結果は最近アメリカ医学団体雑誌に掲載されています。

 

 

 マドセンとその同僚達は10歳以上の7,418,391名を1980年1月から亡くなるまで、又はデンマークを出るまでの間、又は2014年の12月31日までの間のデータを分析しました。これは合計164,265,624名の観察を意味します。自殺が原因で亡くなった人の数は合計34,529名でした。外傷性脳損傷を一度又はそれ以上診断された個人567,823名の内、3,536名は自ら命を絶っていました。全体を通して、外傷性脳損傷の病歴がない100,000人における自殺者は19.9名、外傷性脳損傷を一度でも診察されてその後自殺した人100,000人において40.6名でした。言い換えると、TBIを経験していない人に比べ、TBI経験者は2倍以上の自殺率があることがわかりました。この違いは、調査員達が同時発生又は以前にあった要因を集めている後も依然として変わりませんでした。その要因とは自殺の一因となるもの、例えば年齢、学歴、同棲生活、社会経済状態、婚姻状態、頭蓋骨や背骨以外の骨折、てんかん、共存症、以前の精神医学的状態、自傷による負傷履歴です。自殺率の上昇は頭部外傷に関係している可能性が高いです。

 

 

 調査員は自殺率とTBIの酷さとの関係を研究しました。その酷さのレベルは:軽度(脳震盪)、TBIと記録されなかった頭蓋骨骨折、脳組織への損傷が確認された頭部負傷を含む酷いTBI、の以上3つです。自殺率は負傷の程度に比例して上昇していましたが、軽度のTBIを負った人はTBIを持たない人の約2倍の自殺率が確認されました(TBI有:100,000名において自殺者38.6名、TBI無:100,000名において自殺者19.9名)。

 

 

 自殺率は精神的に異常を持った個人の方が高いです。精神異常なくその後TBIを経験した人の自殺率は100,000名中32.8名、精神異常とTBIどちらも経験していない人の自殺率は100,000名につき13.7名で、精神異常を持った人の自殺率は100,000名中129名(TBIと記録はされていない人)から169名(TBI経験者)という上昇を見せました。また、以前に精神異常が見られず、TBIを経験し、その後精神に支障を来した人の自殺率は、TBIの前後問わず精神異常を経験しなかった人に比べて約7倍の確立があることが分かりました。

 

 

 調査員達は自殺の可能性とTBIが起こってからの時間の関係性を調べ、自殺率はTBIを経験してからの6ヶ月間が最も高いということを発見しましたが、その率は調査全体を通して上がり続けていました。

 

 

 これは何を示すのでしょうか?データは、例え脳震盪のような軽度のTBIでさえ、自殺率を高めるような変化を脳に与えるということを表わしています。TBIに関連した行動変化を引き起こす仕組みはよく分かっていません。

 

 

 軽度のTBIを経験した人の友人や家族は、特にその事故発生からの約6ヶ月間特に自殺率が上がることに気を付けるべきです。もしその人が鬱傾向を見せたり、衝動性を強めたり、態度に顕著な変化が見られたら、医師やメンタルヘルスの専門家の診察を受けた方が良いかもしれません。

性的暴行者の治療法に関する会議からの5つの収穫とは?

会議はとても有益なものでしたが、1つの欠点を改善することが出来るでしょう。

 

 ブリティッシュコロンビア州バンクーバーにおいて、第37回目の例年会議が研究治療団体によって2018年10月に行われました。この年の“Better Together”の議題は、幼児性的虐待の回避の必要性と社会をより安全なものにするためにそれぞれがどうお互いにかかわり合い、頼っているのかを認識するための教育活動(この団体(ATSA)の中心的目標)に関してでした。

 

2018年 ATSA会議 –Better Together

出典:ATSA会議パンフレットから

 

 前回の私のATSA会議2017と同様に、この会議からの収穫を5つまとめたいと思います。ATSAの進歩の目玉でもある4点に加え、私の視点から見たATSAの成長の可能性がある点を述べています。この収穫はメンタルヘルスに関する職業にある方なら、臨床医、研究者、支持者誰にでも合う様に意図しています。

 

 

  • 言葉の重要性をATSAは認識続けている

 

 

児童性的暴行における言葉は素晴らしい進歩を遂げていて、人により敬意を示した呼び方を使う様な方向へ動き始めています。(例えば、人を前に持って来る言葉遣い:(今)People with disabilities/障害のある人。(昔)Disabled people/障害者、など)。メンタルヘルスにおける専門家たちが彼らの原稿の中で使われる言葉遣いに大きな変化がありました。一般的に、個々を“性犯罪者”と呼んでいたのから“性的に虐待を振るう傾向のある人”と変わったり、“小児性愛症者”から“思春期前の子供に魅力を感じる個々”というように使われる語彙が変わりました。

 

 

  • 子供に性的魅力を感じている者の全員が、行動に移すわけではない

 

 

上記の様に非難を避けた呼び名よりも更に注目すべきかもしれないのは、子供に魅力を感じつつも性的暴行を犯していない人(大抵後期青年や青少年)に焦点を当てる動きが続いていることかもしれません。実際に、思春期前の子供に興味を持つ人が性犯罪に走らないように防ぐ対策は明らかに進歩しています。これらの試みは個人に適した臨床サポートを与え、彼らの嗜好を認めさせ、犯罪に加担せずに人生を謳歌出来る方法を提案することにも注目しています。またこの試みは幼児に興味を持ちつつも子供を痛めつけたいわけではない人達に関する研究に焦点をあてているものでもあります。これはこの分野において開拓的なものであり、発展していくのに必要な一歩です。

 

  1. 専門家は汚名を感じている

 

児童性的暴行の防止と仲裁にあたる分野の専門家達は汚名を自らに感じているようです。児童性的虐待を阻止し、仲裁することは社会を安全にする為に必要不可欠なことだと考える人もいるかもしれません。ですが、その虐待を大きな枠で捉えてしまう人の中には、児童性的虐待に関連する研究をするメンタルヘルスの教授や研究者にすら烙印を押してしまう人もいます。メンタルヘルスを提供する会社を例に挙げれば、児童愛を感じる人に対する自身のサービスを宣伝することに対し、顧客を守るだけではなく、自分自身を守るという点において不安に思うと述べています。不名誉の印にも関わらず、ATSAは断固としてその姿勢を貫いています。

 

 

  • 性行為が全ての問題ではないということ

 

 

メンタルヘルスを提供する会社やそれに関連する事業に携わる読者の人は、児童性的虐待をする人の治療は性行為に限ったものではないということが、この記事や以前の会議において何度も繰り返されていた為ご存知かと思います。つまり、問題は性行為が全ての問題ではないということです。人は単一ではありません。例え望まれない性嗜好を子供に対して持っていても、彼らは私達と同じ様に別の関心があるのです。もしかすると彼らは健全な交際を望んでいるけれど、鬱や極度の不安を抱えているのかもしれません。個々人を視野から外してしまいがちですが、その一方で汚名を着せられた臨床表現(例、子供に対する嗜好)に気付くように努力することは、それ程難しいものではないかもしれません。この介入は全体観的方法論を保証するものとなります。

 

  1. 多国籍を考慮した研究法がATSAには必要

 

性的暴行者の治療に関わる団体は多国籍的視野を取り入れようとし続けていますが、この視点はそれ程広く取り入れられたり広まっている様子はありません。ただ、最近の2回のATSA会議(2017,2018)において多くの発言者が文化や性的虐待に影響する個々の相違性を取り上げていたことはとても奨励され、人種や倫理的相違、特異な文化グループとともに働くことについて討論会も開かれていました。しかし、多くの発言者が人種、民族性、その他に身元を特定する要素について言及しませんでした。その他にも言語や場所といった文化的考察(例えば、その人物が田舎と都会どちらに住んでいるのかという比較)は、臨床や研究において同様に大切です。進歩は進歩であって、ATSAメンバーの多国籍に関する懸念や功績は言及に値するものですが、この分野により一層の努力を捧げることがこの分野にとって有益となり、重ねて私達へ有益なものとなることでしょう。私達は社会をより安全なものへと作っていくことを目指していますが、それは多数ある個々の社会を改善することでもあります。

 

放火魔の心の中とは?どんな種類の人物が、放火をせざるを得なくなるのか?

カリフォルニアの山火事:

 

 

 カリフォルニアで起きた悲劇的な山火事の猛火が今年、数千もの家屋を破壊し、何十万もの土地を焼却し、たくさんの人を死に至らしめました。最近では、パラダイスの町全体が、いまだくすぶり続ける灰になり果てました。山火事の破壊的力の前では、誰であれ何であれ脆弱性が強調される中、今週のカリフォルニアの山火事で焼失した家屋の中には、マイリー・サイラス、ニール・ヤング、ジェラルド・バトラーらセレブリティーの家屋も含まれていました。現在起きているこの火災は、今もなお猛威を振るっていて、そのスピードはあまりに早く、火災の原因を知り、火災による破壊を十分に理解することができない状態ですが、カリフォルニアのこれらの火災のいくつかはわざと点火されたものでした。51歳の男が、南カリフォルニアのホーリー火災を起こした罪で告発されました。32歳の男は、カリフォルニアの5件の火事に関わっているとされました。では一体どんな種類の人物が、生命や財産を奪い、脅かし、破壊して、自然の美しさを火事によって壊滅させるような放火癖に負けてしまうのでしょうか?

 

 

 トランプ大統領は、これらの猛火の根本的原因は、環境政策にあるとカリフォルニアに非難の矛先を向けていますが、この問題はこの州に限ったことではありません。タイラーほかによると、2016年4月から2017年3月の間に、イングランドでは放火による火事が76,106件あり、1,027名の負傷者と47名の死者を出しました。経済的損失は、驚愕の17億英国ポンドでした。同研究では、アメリカで見積もりによると毎年261,330件の放火による火事が報告されており、約10憶の物的損害と、440名の死者を出したことがわかっています。

 

 

 放火は、復讐の道具や、別の何らかの狡猾で秘密裏の破壊的目的として用いられ、放火はさらに、何らかの精神疾患の1つの形として認識される、抗いがたい衝動の1つです。さらなる研究が必要ですが、放火は通常、はっきりとした障害の1つではなく、代わりに病理学に深く根差したものからくる、行動の1つとして考えられています。

 

 

 研究では、放火魔はほかの犯罪者と比較して、精神医学サービスに登録していた傾向が著しく多く、地域対照患者と比較して4倍も多い傾向にありました。中程度警戒司法精神衛生サービスに入院していた10パーセントから50パーセントの患者が、放火の犯罪歴がありました。10代の若者や成人早期の放火犯は、その後の人生で統合失調症であると予測されています。放火の行動は、青少年の動物虐待とも関連しています。そのほかの統計学的に重要な危険因子は、男性であることおよび性的虐待の被害者であることです。放火魔は、ほかの暴力的な犯罪者とは異なり、社会的にもっと孤立していて、物事の処理能力に欠けており、自殺率はほかの対照患者よりも著しく多いのです。女性は3分の1近くが意図的に放火を行うことが報告されていますが、女性の放火犯に関する精神病理学および犯罪の特徴については多く知られていません。最近の研究では、女性の放火犯は、男性の放火魔よりも鬱や薬物乱用、パーソナリティー障害と診断されることが多いです。

 

 

 放火犯は、はっきりとした心理学的特徴群をもつ、別々の犯罪者の一群であるようです。このことは、これらの人々を刑務所に収容することを目的とし、彼らが犯罪者になる前に特別な治療をする必要性があることを提案しています。さらに優れた研究が、効率よく治療を進めるために必要ですが、2018年のタイラーおよびその共同研究者らによって出版された、放火歴のある63名の男女の患者を対象とした小規模研究では、精神障害をもつ犯罪者を対象とした介入プログラムの効果を追求しました。実験の結果は、治療を行うことで著しく放火の衝動を減らしましたが、この小規模研究をさらに進め、確認するためにはさらなる研究が必要であることを示しました。

 

 

 ユトレヒト大学の犯罪学者、リディア・ダルフイセンによる、1800年から1950年までの西ヨーロッパの放火狂を調査した2018年レビューによると、放火魔に対する見方は時間をかけて変化しているようです。このデータは、犯罪者として見るのか、精神障害者として見るのか、前後に揺れる振り子を示しています。病気として見る場合、精神異常の形として放火魔を罰することは、倫理的ジレンマとなりますが、社会に恐怖を与える放火による最悪な破壊行為を減らすためには、もっと多くのことを成し遂げる必要があるのは疑いようもありません。
 現在の議論は、猛威を振るう山火事の数とその激しさは気候変動の影響だということに焦点を当てていますが、マッチに火をつけるかもしれない人の心を理解することにはあまり注意が払われていません。社会は、地球の気候を変える取り組みには手ごわい挑戦に直面していますが、カリフォルニアやそれ以外の場所を一掃する火事の、壊滅的な破壊を防ぐ方法を探すには、心理学的研究および優れた精神衛生サービスのさらなる支援が、猛火と闘うための効果的で簡単に到達できる方法を提供してくれそうです。