なぜ独創性を発揮するには勇気が必要なのか?

ー独創的な勇気はどのようにして育まれるのかについての新しい研究ー

私たちは学校や職場においてさまざまな場面で、オリジナルのアイデアを述べなくてはいけないことが良くあります。

これは今週、アメリカ心理学会とエモーショナル・インテリジェンス・カンファレンスの会議で発表された、イエールセンター・フォー・エモーショナルインテリジェンス(心の知能指数について研究する機関)による新しい研究結果です。

ある研究は、高校生たちが思い切って独創性を発揮できるためには、学校の環境がかなり大きく影響しているという事を示しました。

(例:大人同士の良い人間関係、多様性への敬意、学生たちの発言権、など)

また別の研究によると、職場でも同様の事が言えるとのこと。

組織全体が、独創的な考えをサポートし、それに見合った報酬を与え、、社員たちが仕事上の心配ごとや意見を発言しやすい環境である場合、全ての働く人たちがクリエイティブ(独創的)になれる傾向にある

という事です。

アンリ・マティス(フランスの画家)の有名な言葉に「独創性は勇気を必要とする」(”Creativity takes courage”)というものがあります。

どのような意味なのでしょうか?

人々の行動に、独創的な勇気がどう影響しているのでしょう?

制限のない自由なプロジェクトを始める時、まずその仕事をどのように進めて行くべきかという決断に迫られます。

独創的にいくべきか?

コストがかかりすぎないだろうか?

どんなリスクの可能性があるのか?

この決断の背景にあるプロセスを理解するため、私たちはクリエイティブな仕事に向かう時の、考え方や感情を測定してみる事にしました。

高校生と大学生のグループに、こんな3つの質問をしてみました。

・彼らがオリジナルのアイデアを発表した時に、どんな事が起こるかについて

・彼らのアイデアをジャッジする人たちの反応について

・クリエイティブな仕事への自分自身の感情について

回答から分析した結果、学生たちがクリエイティブな仕事へどのようにアプローチするかに関して、3つの異なる事実を発見しました。

1つ目の要因は、自分のアイデアがどのように受け入れられるか、という不安でした。

特に学生たちは、自分のオリジナルのアイデアが社会に与える、マイナスの影響について心配していました。

クラスメイトに自分のアイデアをバカにされたら?

みんなに笑われたら?

挑発的で失礼だと教師に思われたら?

2つ目は、すでに立証済みの事実に固執してしまう傾向にある、という事です。

これは、オリジナリティーがあって独創的であるよりも、安全である方が良いという考え方です。

これは、学校の教師や大学の教授が、学生から研究課題について何をしたらいいか、どんな手順を具体的に踏んだらいいのか尋ねられた時に、日頃からよく感じていることです。

教師や教授は、学生に深く考えてほしい、関連性を見つけてほしい、独創性を持ってほしいと思っていますが、学生たちにはなかなかその心構えはなく、便利で手軽な方法や、チェックリストを求めてしまいます。

3つ目は、思いっきりクリエイティブになるには欠かせない事です。

独創性は個々のアイデンティティーにとって大切だという考え方です。

独創的な思考やアイデアを表現することは、とても意味があり価値があることです。

このような考え方は持っている人は、自分の能力を見せびらかしたいという気持ちよりも、自分自身の成長がモチベーションとなっていることが多いようです。

さらにこのような考え方をする人は、とても柔軟で、芸術や科学、テクノロジーや起業に関してまで、分野を超えてつねに創造的に予測できるという特徴があります。

たくさんの(おそらくほとんどの)教育者や組織のトップに立つ人たちは、独創性の大切さをとても認識しています。

世界経済フォーラムでは、いくつかの独創性に関連するスキルのトップ10のリストが提示されました。

これらのスキルは、その重要性においてのみランク付けられています。

オートメーション化(自動化)が進化する中で、独創性や革新のためのスキルを持つことは新しい経済を成長させることへの鍵となるでしょう。

独創性が掛け算の九九やエクセルのスキルを学ぶのと同じくらいの価値を持ち、独創的な決断をする事でリスクを減らし、より多くの利益につながるような社会になる事に想像が広がります。

そのような考え方や勇気をサポートできる環境を増やしていくために、私たちは何を知っておくべきなのでしょうか?

イエールセンター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスのジェシカ・ホフマンさんと同僚らが、教育システムが独創的な考え方をどのように育んで行けるのかについて、明らかにしました。

彼らは、学校環境(学校生活の質と特徴)と、学校で一般的に経験する感情が、独創性に対する学生の考え方にどう影響を及ぼすのかに焦点をおきました。

「学校環境」に含まれるのは以下の点です。

・身体的にも精神的にも安心できるということ

・学生が決定について意見を言えること

・学生間の関係性の質、学生と大人の関係性の質、大人間の関係性の質(学生たちへのお手本となるような人間関係か)

・多様性を尊重すること

・全体的な学校の見た目や雰囲気

学校環境に対する学生の評価を、あらゆる側面から検証した結果、独創性に対する考え方への影響が明らかになりました。

とりわけ、悪口、うわさ話、いじめなどが頻繁に見られるなど、学校環境が悪化していると、(独創的なアイデアを出しても)友人や教師間でで、ネガティブな評価をうけるかもしれないと感じてしまう場合が多いと予測されました。

教育の質の高さ、学校での大人間のポジティブな人間関係、学生たちの発言権、そして多様性の尊重は、学生たちの独創性と大いに関連していました。

さらに、1年後であっても、学生たちの、独創性に対する考え方への満足感とモチベーションが予測されました。

私の研究室でも、今回は社会で働く大人たちにですが、何が独創的な行動を可能にしているのか、同じような調査をしてみました。

分野を超えておこなった大人への全国的な調査では、職場の環境が社員たちの独創性に影響するのか、そして革新的な仕事へつながるのかを調べました。

研究や開発、デザインに関わるような、オリジナリティーが求められる職業の人たちは、より高い独創性を持っている傾向にありました。

しかし、より効率的に仕事を進める際や、新しい仕事を始める時など、どんな職業であっても、独創性を発揮したり、革新的になる事は可能です。

私たちは、社員らの独創性をサポートする、職場環境についてテストしてみました。

調査に参加したうちのほぼ半分の社員が、自分の仕事において発言権を持つ事は全くない、ほとんどない、時々しかない、と回答しました。

つまり、組織が抱えている問題について意見したり、他の人にアドバイスをしたりする機会はほぼないようなのです。

職場環境のこういった側面は、社員らが自分の行動においてどの程度、独創性を表現したり、革新的な仕事ができるか、すなわち彼らが新しいアイデアを提案したり、職場での独創的なプロジェクトに貢献するかなどに強く影響します。

同様に独創性は、組織がどの程度それを評価し、サポートし、それに見合った報酬を与えてくれるのかによっても影響されます。

この調査から得られる事はとても明快です。

もし教育者が学生に、将来に仕事で役立つための準備をさせたいのなら、また組織のリーダーが、社員の独創性や新しいアイデアから利益を得たいなら、彼らが、不安や意見を声に出しやすい環境を、多様性を尊重しあえる環境を、そして良い人間関係を築けるような環境を、整えるための投資が必要でしょう。

学校での、教師や他の大人の関係性や、組織でのリーダー同士など、お手本となるような人間関係は、それぞれの環境の雰囲気を決めるうえで特に重要です。

未来へのチャレンジは、社会的、個人的なレベルで、独創性への考え方を、懸念から好奇心や勇気へとシフトさせています。

個人は、サポートを受けられる環境でアイデアをシェアする経験をつむ必要があり、何かを新しくチャレンジしようとする時につきまとう、不安を乗り越えるための、スキルを身につけなくてはならないでしょう。

そして教育機関や労働組織は、独創性や革新への、幅広い文化的なサポートを作り出す必要があるかもしれません。