「小脳」が次なる大ごとになる可能性がある、3つの理由とは? どんな要因によって、セレバラム(小脳)にスポットライトが当てられるのか?

 神経科学における報道価値のある傾向を追う、根拠に基づく取材を行うジャーナリストとして、私はセレバラム(ラテン語で「小脳」を意味する)の高まる人気に注目してきました。ここ数週間で、このよく見落とされる皮質下の脳領域は、専門的流行語の地位を急速に築き上げました。私には、「セレバラム」が、神経科学の難解な語彙から毎日使う用語に稀な飛躍を遂げた、「扁桃体」や「海馬」、「前頭前皮質」などのように、よく使う単語になりつつあるという予感がありました。

 

 

 過去10年間で、私は大脳と小脳の相互作用にスポットライトを当て、「小脳」という単語をよく使う単語にしようと(それほど大きな成功はありませんでしたが)試みてきました。下記のリストでは、「小脳」が神経科学において次なる大ごとになる転換点を作った可能性がある、と私が推測する、3つの重要な要素を提示しています。

 

 

 小脳がここ数週間でどのようにして「ホットな」話題になったのか、簡単な脱構築に入る前に、重要な注意事項があります。小脳に関する報道記事が急上昇する可能性がある3つの要因を表したこの短い意図的なリストは、メディアの傾向が、小脳研究の包括的回顧録以上に、神経科学にどのように作用するのかを表したさらに詳細な分析です。

 

 

ヒトの小脳における非運動機能が、神経科学の流行の話題であることを表す3つの理由

 

 

ジェレミー・シュマッハマンは、現代の小脳研究における優れた思想的リーダーである

 

 

何よりもまず、20世紀後半以来、ハーバード・メディカルスクール・マサチューセッツ総合病院のジェレミー・シュマッハマンは、パイオニア的研究者であり小脳の支持者でした。

 

 

1998年、彼は神経学者や神経科学者に、ヒトの小脳は運動機能にのみ働くという長年にわたる(しかし不正確な)考えに疑問を持ってもらうため、計画を軌道に乗せる画期的な論文を発表しました。

 

 

 シュマッハマンの革命的な『小脳性認知情動症候群』(1998年)や『思考の測定障害』(1998年)などの仮説は、20世紀後半の大変革でした。彼の研究仲間の間で当初は疑問が起こりましたが、21世紀初頭を通してシュマッハマンは、小脳が運動および非運動機能において重要な役割を果たしているということを、全世界の神経科学コミュニティーの否定派に徐々に納得させました。私の意見では、シュマッハマンの深い洞察と揺らがない忍耐は、「小脳」をよく使う言葉にした大切な原動力なのではないでしょうか。

 

 

 できれば2、3分かけて、小脳は筋肉の協調を微調整するのと同じように、私たちの思考や感情も微調整する可能性があることを仮定する、『思考の測定障害』の仮説(今では広く受け入れられていますが)を彼が立てたとき、開設された神経学コミュニティーから当初受けた反対を説明するジェレミー・シュマッハマンの動画を見てみてください。

 

 

脳科学の俗説を暴く:小脳は運動機能のみの脳領域ではない

 

 

最近ヒトの小脳が科学リポーターの関心を引いている2つ目の理由は、小脳が数世紀にもわたり誤解されてきたというものです。脳に関する長年にわたる考えが誤りだと証明されるとき、報道価値のある神経科学に基づいたお話が生み出されます。小脳が過小評価され、長きにわたり運動機能にしか作用しないと間違えて考えられてきたので、ヒトの小脳が実際は広範囲の非運動機能に関与しているという新しい発見は、当然メディアの騒ぎを生み出しました。

 

 

ヒトの小脳が運動機能にのみ作用するという脳科学の俗説を暴くための私の数十年にわたる試みの一部として、2018年10月20日、私は「サイコロジー・トゥデイ」のブログポストに、”Da Vinci Was Right: The Cerebellum Deserves More Recognition”(『ダ・ヴィンチは正しかった:小脳はさらなる認知機能を受けるに値する』)を書きました。この投稿は、レオナルド・ダ・ヴィンチが脳のワックス鋳造を行った1504年までさかのぼり、「小脳」という単語の起源をたどったものです。500年の間、ほとんどの神経科学者は、小脳は認知機能とは何の関係もなく、運動機能にしか関与していない、と強く信じて疑いませんでした。

 

 

10月23日の朝に、私は目を引き付ける見出しが付いた、セントルイスにあるワシントン大学メディカル・スクールのプレスリリースを見ました。見出しは「心の性質をコントロールする中枢部、長く無視されてきた脳領域で発見:小脳は思考と動きを確認し訂正する」というものでした。このタイトルが、私の目に飛び込んできました。この魅力的な新しい研究について読んだ後、アメリカ東部標準時間(EST)午前11時までに手に入れなければ輸入禁止になる、今度の論文のPDF版を手に入れるため、ワシントン大学メディア関係者の幹部にすぐメールしました。

 

 

この論文をすべてむさぼるように読んだ後、私はこの最先端の研究に関する自分のブログポスト、”Cerebellum Studies Challenge Ancient Notions About How We Think”(『小脳研究、思考方法に関する古い考えに挑戦』)の仕上げをするのにあまりに忙しく、輸入禁止が実行されてからすぐにこの新しい研究を報道した、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のモーニングエディションを聴いていることができませんでした。NPRのお話の中心は、筆頭著者のスコット・マレクと、最終著者ニコ・ドーセンバッハのワシントン大学研究室の同僚たちによる、ジャーナル『ニューロン』に10月25日に発表された論文、”Spatial and Temporal Organization of the Individual Human Cerebellum”(『個々のヒトの小脳における、空間および時間的構造』)です。

 

 

社会改革主義者のジャーナリスト、ジェイコブ・リーズは、一般国民の意識に弾みをつけるのに失敗している一見すると人気のなさそうな話題に関して、報道することを決してあきらめない決意を表明したとき、「石工」のアナロジーを用いました。何年も科学を基本としたライターとしてやってきて、誰も小脳に関して興味を持たないとあきらめかけていたとき、リーズの言葉はこの話題について書き続けるため私を触発しました。彼はこう述べます。「何も助けになりそうにないとき、石工が岩にハンマーを打ち下ろすのを見に行きます。岩にひびがなかなか入らず、たぶん100回は打ち下ろしていたと思います。ですが101回目の打ち下ろしで岩は二つに割れ、ここで私は、一回の打ち下ろしがこのことを可能にしたのではなく、それまでのすべての打ち下ろしがこのことを可能にしたという事実を知るのです。」

 

 

「石工」のアナロジーを使って小脳に関して注目したことは、突如として神経科学の時代精神の一部になりました。小脳の数多くの謎を解決しようと、絶えず「ハンマーを打ち下ろし」ていた神経科学者たちが、明らかに世界中に数えきれないほどいたことに注目するのは重要です。これらの研究者たちは、ついにひびが入って開いた、小脳に関する公共の利益につながった「101回目の打ち下ろし」を引き起こした人たちです。とはいえ、マレクほか(2018年)による最新の論文が、国際ジャーナリストの好奇心を刺激した転換点に到達する、小脳に関するこれまでのすべてを引き起こした「101回目」の打ち下ろしであるようです。

 

 

ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の、小脳研究に関する2つの報道

 

 

ここ2、3年で、NPRの科学デスク在籍のレポーター、ジョー・ハミルトンは、数百万のリスナーを獲得した、小脳に関する2つの報道を行いました。私が知っている限りでは、ハミルトンはヒトの小脳における非運動機能に関して絶えず報道していた、大規模な一般聴衆をもつ数少ないレポーターの一人です。NPRでの彼のモーニングエディションにおける報道は、ヒトの小脳が神経科学において次なる大ごとになる可能性がある、3番目の理由です。

 

 

 NPRの主力なニュースマガジン、「モーニングエディション」は、一週間で1,500万人近くのリスナーを獲得し、一週間の累積リスナーで見ると一番多く聴衆されたラジオ番組となっています。「小脳」に関して「モーニングエディション」が報道を行ったことは、とても大事なことです。

 

 

 ジョー・ハミルトンによる最初の小脳に関する報道、『ヒトの不完全な脳が、思考と感情における小脳の役割を明らかに』は、ジェレミー・シュマッハマンとのインタビューを取り挙げ、NPRの「モーニングエディション」2015年度版で、3月16日に放送されました。

 

 

 ジョー・ハミルトンによる2回目の小脳に関する報道、『過小評価された小脳が、脳科学者らから新たな尊敬を得る』には、ニコ・ドーセンバッハとスコット・マレクとともに、シュマッハマンとのインタビューが含まれています。この報道は、NPRの「モーニングエディション」2018年度版で、10月25日に放送されました。

 

 

 これらは、最新の小脳研究における最高の時期で、現状を揺り動かし続け、神経科学に基づくこれまでの体制を崩壊させ続けています。「思考をコントロールする中枢部」としてのヒトの小脳に関するGoogleアラートは、ここ2週間で私のスマートフォンに絶え間なく鳴り続けています。さまざまな意味で、マレクほかによるワシントン大学の論文(2018年)は、小脳を瞬間的なメディアのお気に入りにした転換点になりました。願わくは、小脳に関する人々の好奇心が、これからも続いてほしいものです。

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